美星町にて、ネパールの音に出会う
岡山県の美星町という、文字どうり星の美しく見えるらしい町へ行ってきた。
見えるらしい、というのは当日は天気があまりよくなかったからである。
倉敷市で音楽館をやっている八木たかしさんという人がいるのだが、この人を
中心に岡山の歌い手たちがこのまちでフォーク・キャンプをやる、というので
ある。フォーク・キャンプというのは、歌い手や聞き手が集まって歌と活動の
交流をし、また鑑賞しあい批評しあうなどといったこと、さらに関連したイベ
ントなどを行うのである。
当日、私達のグループもギターをかかえて参加したわけであるが、ここにネ
パールから来た音楽家たちがゲストとして来ていた。
聴いた印象としては、インドに近いがインドでない、もっと日本や中国に近い、
というまさにネパールの位置そのものの音であった。
中に一曲、日本のうたである、”赤とんぼ”の変奏曲みたいな演奏があったの
だが、日本の曲なのにまぎれもなくネパールそのものの音がきこえてきたので
ある。サーランギという名のバイオリン風の音の出る楽器と、横笛と、太鼓と
タンバリン。美しい演奏は山の音であった。
日本の秋ではなく、もっと乾燥したネパールの山の春がそこにあった。
さて、ところで私達は何者であるのか?
私達の音楽は一体どこの国の音楽なんだろう?
フォークソングというのはもともと民謡のことである。民衆のうたとして、生
きている音楽こそ私達の目指すものなのだが、しかしそれはいったい誰のうた
なんだろう、と。
もし私がネパールへ行ったとして、彼らの前で演奏したとき、彼らは私を、私
の歴史を、私の生活を、私の生きる世界をなんだと思うだろうか?
短絡的なのは承知の上だが、今私は三味線に関心をもっている。
いつか、自分自身の”うた”をそれでかなでてみたいものだ。