このうたについて


 
曲 中島 光一 詩 Charles Chaplin 歌 中島 光一


 まず、作者の中島光一さんについて。このひとの事を語ると、関西のフォークソングの歴史をすべて語らなければならなくなる。もちろんこのひとがすべてを作ったわけではないし、すべての場に居たわけでもない。しかし、すくなくとも中島さんたちからすべてがはじまったんだと私は思っている。
 そして今も中島さんは働きながらうたい続けている。けして朗々とした声でうたうひとではない。嫁さんの野田淳子さん(このひとはプロの歌い手)いわく、「ぼそぼそと」うたうひとなんである、聞いての通り。けれどこのひとのうたう非常にきびしい現実は、このひとのうたでこそなんというかリアルにつたわってくる。いわゆる「うまい」人、「美声」のひとがうたうと、うたが含んでいる現実に負けてしまうか、あるいは表面だけを流れていってしまうのに、このひとの「ぼそぼそ」は実にしたたかでしかも深い。
 20年ほど前、私ははじめてこのひとのうたを、URCから出ていたレコード(廃盤)で聞いた。当時フォークソングのサークルに参加してがちゃがちゃとやっていた私ではあるが、金沢裕一さん(うちのバンドのリーダーです。今は。)の家できいたこのひとのうたが、つまり私が今なおうたい続けている、その出発点というかひとつの原因というかそうしたものである。
 そしてまたこのひとたちの始めたうたの流れの一員であることを誇りに思う。「新しい時代がきみにも私にも」やってくるようにいろいろな意味で生きていければいいな、とおもっている。